古民家で暮らしたい方(移築再生)

古民家での暮らしには興味があるけれど、勤務地や生活を考えると、移住することは難しくあきらめている方もいらっしゃるでしょう。しかし日本の古民家は、金物に頼らず木材を組み上げる構法で建てられてるので、各部材を分解したり再度組み上げることが可能です。この特性を活かし、譲り受けた古民家を別の場所で移築再生することもできます。そんな移築再生を実例を通してご紹介します。

1.提供民家
まずは提供していただく民家探しから始まります。移築先の敷地の広さなどから、移築できる民家が限定される場合もありますが、部分的に移築したり、都心であれば比較的小さな蔵を住居として移築再生している事例も多数あります。私の所属している日本民家再生協会では、提供していただける民家を民家バンクと言う形で紹介しています。ここで提供していただける民家は、民家バンク利用料(情報料)、解体費、運搬費がかかりますが、建物自体は無償です。
注意点としては構造体である柱や梁の状態です。腐朽劣化やシロアリ被害が進んでいる場合は、部材の補修や取替え費用が大きくなり、移築再生が難しいこともあります。
 
提供民家の外観
 
提供民家の和室
 
提供民家の土間
 
2.解体調査
提供していただく古民家が決定すれば、解体実測調査を行います。現地再生では解体せずに調査を行うことが一般的ですが、移築再生の場合は、解体時にも実測を行えるので、精度の高い調査が行えます。
移築先で再度組み直すので、柱と梁に番付(通りごとに番号や記号を定め、該当する柱梁に記号と番号を記した板などを貼付ておくこと)を行い、継手・仕口と呼ばれる柱梁の加工を傷めないように丁寧に解体していきます。また建具や天井板・書院などの造作は、最大限再利用しますので、雨で濡らさない事が重要です。柱や梁は、埃やススで真っ黒に汚れていることが多いので、クリーニングを行います。
 
解体
 
実測調査
 
3.部材補修と仮組
無事解体が終われば部材を加工場に持ち帰り、クリーニングを行います。また、部材に傷んだ部分があれば補修をしたり、新たに作り直したりします。場合によっては部分的に仮組(かりぐみ)を行い、不足部材の確認や、納まりの検討を行います。
 
部材のクリーニング
 
仮組(かりぐみ)
 
4.基礎
移築再生は、建築基準法上は新築と同じ取り扱いとなります。そのため古民家であっても、一般的には鉄筋コンクリート造の基礎とし、基準法で定められている壁量計算と耐久性関係規定を満足させていきます。伝統的な石場建で移築再生を行う場合は、規模によっては、限界耐力計算を行い構造計算適合判定を受ける必要があります。
 
移築先での基礎工事
 
5.建て方と内外装工事
移築先で基礎が完成したら、いよいよ建て方です。一般住宅と同じように、クレーンを使って組み上げていきます。鉄筋コンクリート基礎の上に土台を敷きアンカーボルトで固定していきます。柱の足元と頭の部分は、N値計算に基づいて金物で固定していきます。さらに、筋交で耐力壁を作っていきます。
建て方の次は内外装工事と続いていきます。一般住宅と同じ工程で進んでいきますが、金物が露出しないようにしたり、柱を壁の中に隠さない真壁としたり、伝統的な日本民家の意匠を継承した設計を心掛けています。素材も自然素材や無垢材といった経年変化を楽しめるものを採用しています。
 
建て方
 
筋交による耐力壁
 
内装工事
   
6.完成
外観は一般的な木造住宅と大きく違いはありませんが、内部空間は古民家ならではの大黒柱や大きな梁が特徴的な住宅です。今回ご紹介した移築再生工事は埼玉県にあった民家を静岡県に移築するプロジェクトでした。
 
移築再生後の外観
 
深い庇の玄関ポーチ
 
土間と一体となった開放的な居間食事室
 

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